白銀の寝台特急

札幌への出張の帰路。休日とも重なったので、いつもとは違う経路で帰りたくなった。東京からの仕事にはいつも飛行機を利用している。今回は情緒あふれる列車でゆっくりと旅をしてみることにしよう。
小学生の頃、旅行が好きで毎年夏休みに、日本全国に出かけていった。当時はブルートレインブームのまっただ中であった。ブルートレインとは、国鉄が走らせていた寝台特急列車の愛称である。機関車に牽かれていた寝台客車が青一色をしていたことから、そう呼ばれていた。料金も高く、決して寝心地やサービスが良いとは言えない寝台で、今ではすっかり本数も減ってしまったが、その頃は寝台車自体が高級感があり、走るホテルとまで言われた豪華特急列車である。
そんな往年のロマンをかき立てられる一本の列車が、ここ北海道にはある。東京の上野と、北海道の札幌を結ぶ寝台特急「カシオペア号」だ。
昭和63年、本州と北海道を繋ぐ青函トンネルが開業すると、札幌行きの寝台特急「北斗星」が新設され、人気を博した。北斗星の車両はブルートレインであったが、より豪華で優雅な旅ができるようにと、同じルートながら、新しく専用客車を製造して作られた列車が「カシオペア」である。
カシオペア号は平成11年7月に登場。「カシオペア」の名前は、天空に輝く北斗星(北斗七星)と、北極星のある天頂を挟んで対称に位置する星座から付けられた。いわば北斗星と組になっている列車であるが、北斗星が毎日運行される定期列車であるのに対して、カシオペアは専用列車が1編成しか存在しないため、週3便程度の不定期運行となっている。
カシオペア号は従来の寝台特急と大きく異なり、オール2階建て個室寝台のみの客車で構成されている。車体も白銀色にカシオペアを表す5本のグラデーションラインが入った高級感あるデザインである。先頭と最後尾の車両には、展望室タイプの個室「カシオペアスイート」とラウンジカーが設定され、車窓の風景を楽しめるようになっている。走るホテル、再び。私にとってカシオペアとは、そんな列車なのだ。